西洋の自死 ダグラス・マレー著
リベラルな移民政策がリベラルな社会を喪失しつつある現代ヨーロッパ社会に警鐘を鳴らす書。
第二次世界大戦後、移民を受け入れてきた西洋の多文化主義がムスリム移民の宗教観の前で脆くも崩れていく様が描かれる。
改めて、保守思想について考えさせられる。
ギリシア・ローマ文明、キリスト教文化、啓蒙思想を生んだ西洋。その西洋近代主義の行きついた先がニヒリズムという価値感の喪失。近代化されたが、アトム化した個人が実存的不安、生きる意味の喪失感を抱える。それは100年前すでにニーチェらが予言していた。(三島由紀夫も確かそういう感じのことを言ってるんじゃなかったか?現代はそのニヒリズムが加速しているとも言える。。)
リベラルで多文化主義は価値判断を留保する。その陰にはニヒリズムが潜んでいる。
欧州の右傾化、イスラム的価値観との対立とは結局、西洋自身が呼び込んだものの帰結なのだと著者は言う。