Yoshitake Hashimoto

読書メモ 読書を繋ぐ 繋げる読書 交差する思想

『人新世の資本論 斎藤幸平』『カール・マルクス 「資本主義」と戦った社会思想家 佐々木隆治』

 

カール・マルクス(Karl Marx 1818-1883)について。

両著者とも新MEGA(Marx-Engels-Gesamtausgabe )の編集に携わり、マルクス晩年の研究ノートを基づいて新たなマルクスの側面を描き出している。それはエコロジストとしてのマルクス

研究ノートによれば、晩年のマルクスは地球の物質代謝について、土壌、地質、化学、生物、気象学、アジア的共同体などの多岐に渡る研究に没頭していたという。

資本論、第一巻』(1867)以降のマルクスは終ぞ資本論を自身の手で完成させることはなかった。その理由は、これらの研究をどうやって資本主義批判の体系に組み込むかを考えていたのでないかと言われている。

マルクスという名を聞くと、共産主義、革命論と短絡的に結びつけられているが、それはマルクス・レーニン主義スターリンが自身の権威付けを経て、随分とマルクスそのものの像から隔てられていったもの。

曲解やその反動からくるマルクス忌避、また自説にマルクス思想を利用する論者も多い中で、資本論などのテキスト、マルクス自筆の膨大な研究ノートから等身大マルクスを描く作業は貴重。

人類の産業革命以降の活動が、地球環境を変質させ新たな地質時代を築く、『人新世(じんしんせい)』という不名誉な地質区分と名付けられている現代に、「マルクス主義」ではなく、マルクスその人が考えた思想をニュートラルに学ぶことは、重要かと思う。

Das Kapital im Anthropozan

 

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