忘れられた17世紀の哲学者、バールーフ・デ・スピノザ(1632-1677)について。 そしてその現代的意味を問う。 近代哲学はデカルト(1596-1650)を父祖とし、その認識論はカントに引き継がれ、ヘーゲルを頂点とする。 スピノザはデカルトと同時代に生きたが、…
農商務省(現農水省)の農政官僚である柳田國男(1875-1962)が、なぜ民俗学を研究し、日本人の原初的思考へ向かうべく山人考なる思索、考察を深めたのか。 柳田の思想的足跡を辿る、哲学者柄谷行人による柳田國男論。 柳田國男は吉野作造とともに普通選挙を…
カール・マルクス(Karl Marx 1818-1883)について。 両著者とも新MEGA(Marx-Engels-Gesamtausgabe )の編集に携わり、マルクス晩年の研究ノートを基づいて新たなマルクスの側面を描き出している。それはエコロジストとしてのマルクス。 研究ノートによれば…
明治初期、自由民権運動のなかで生まれた民衆による民衆のための憲法草案があった。 正式名称「日本帝国憲法」。 五日市の民権派を中心に起草されたから、のちに「五日市憲法」と名付けられた。 大日本帝国憲法が全76条あるのに対して、五日市憲法草案は204…
近代政治思想の原点について改めて学ぶために読む。 社会契約説の祖、トマス・ホッブズ(1588〜1679)の時代背景と、その近代自然法思想の発展について。 社会契約説とは、人は生まれながらに自由であり、自己保存の権利、自然権をもつ。しかしながら、各々…
自由と民主主義は両立するのか、という近代政治思想的な問いがある。 もっと言うと、資本主義的な自由と平等主義的なリベラル民主主義は両立するのか、ということだと思う。 本書は、この平等主義的な民主主義に見切りをつけたリバタリアニズム、新反動主義…
現代貨幣理論(MMT)について理解のために読んだ。 経済ナショナリズム論で著名な著者による、まさに目からウロコが落ちる経済学入門でもあるが、現代貨幣理論の貨幣について定義が非常に興味深い。 それは、「通貨の価値を裏付けるものとは、租税を徴収する…
資本主義の起源と拡大を考察することは、歴史的に形成されてきた仕組み、そして現在の我々の立っている基盤を省みることでもある。 グローバリズムとナショナリズムの関係性を問い直し、行き過ぎた資本主義をどう「埋め込む」か、という問題に直面するのかも…
民俗学など全く関心などなかったのに、異文化に触れたりしたせいか、自らのアイデンティティについて考えざるを得ないことに気づいた。 学問の大部分が明治以降、西洋から輸入され発展してきたが、唯一、民俗学だけが民間の研究者によって担われきた、という…
梅原は、ハイデガーの詩的世界、存在の哲学も現代文明の救済の哲学とはなり得ないという。 ハイデガーの主張するその思想とは、詩をつくるのは人間のみ、言葉をもつのは人間だけで、「存在」は言葉によってしか現れないというからだ。 新約聖書のヨハネ伝の…
以前、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』を読んだ。 認知革命、農業革命、科学革命、シンギュラリティへと、700万年前からの人類史を概観しながらも、我々はシステムに絡め取られてるのではないかと、文明を批判している。果たして文明は進歩した…
カネを巡る、国家と資本の起源についての哲学的考察。 国家とは合法的な物理的暴力を行使できる共同体であると、社会学者マックス・ウェーバーの有名な定義を引用しつつ、国家による税の徴収力の源泉がここにあると言う。〈暴力への権利〉 また、国家の起源…
NHK「欲望の資本主義」で話題となった哲学者、マルクス・ガブリエルの「新実在論」理解のために読んだ。 ガブリエルのいう「新実在論」の意味するところは、「ものが存在するそのままのあり方に、態度を合わせよ。」ということ。 存在する事実を承認し、その…
パイの分配論において、現代リベラリズムの古典、ジョン・ロールズ著『正義論』の読み直しも府に落ちた。 ロールズのリベラリズムは功利主義的で条件付きリベラリズム。けっして無条件ではなかった。 そもそもパイの分配はリベラリズムに基づく哲学原理では…
フーコー、ドゥルーズ=ガタリを軸にした国家論、暴力論で著名な哲学者によるリベラリズム限界論。 リベラリズムの限界とは、その社会の規範意識を超えることはなく、社会の最高原理とはけっしてなり得ないことだ。なぜ、リベラル派が欺瞞的にみえ凋落著しい…
リベラルな移民政策がリベラルな社会を喪失しつつある現代ヨーロッパ社会に警鐘を鳴らす書。 第二次世界大戦後、移民を受け入れてきた西洋の多文化主義がムスリム移民の宗教観の前で脆くも崩れていく様が描かれる。 改めて、保守思想について考えさせられる。…