Yoshitake Hashimoto

読書メモ 読書を繋ぐ 繋げる読書 交差する思想

リベラリズムの終わり その限界と未来 萱野稔人著

フーコードゥルーズ=ガタリを軸にした国家論、暴力論で著名な哲学者によるリベラリズム限界論。

 

リベラリズムの限界とは、その社会の規範意識を超えることはなく、社会の最高原理とはけっしてなり得ないことだ。
なぜ、リベラル派が欺瞞的にみえ凋落著しいのか?
それはリベラリズム金科玉条にし、その限界に無自覚だからと言う。

 

パイの縮小による危機意識とそれによる「右傾化」現象の分析、また「右」「左」の政治的立場を排した分配の最適化論は以前、別書でも言及していたが、理想主義を排した地に足の付いた論考。


ポストトゥルースと併せて考えたい。。

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西洋の自死 ダグラス・マレー著

リベラルな移民政策がリベラルな社会を喪失しつつある現代ヨーロッパ社会に警鐘を鳴らす書。

第二次世界大戦後、移民を受け入れてきた西洋の多文化主義ムスリム移民の宗教観の前で脆くも崩れていく様が描かれる。

改めて、保守思想について考えさせられる。

ギリシア・ローマ文明、キリスト教文化、啓蒙思想を生んだ西洋。その西洋近代主義の行きついた先がニヒリズムという価値感の喪失。近代化されたが、アトム化した個人が実存的不安、生きる意味の喪失感を抱える。それは100年前すでにニーチェらが予言していた。(三島由紀夫も確かそういう感じのことを言ってるんじゃなかったか?現代はそのニヒリズムが加速しているとも言える。。)

リベラルで多文化主義は価値判断を留保する。その陰にはニヒリズムが潜んでいる。

欧州の右傾化、イスラム的価値観との対立とは結局、西洋自身が呼び込んだものの帰結なのだと著者は言う。

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